こんにちはまつこです。公立小学校の教員として働いていました。
みなさんは
「教員はつぶしがきかない。」
という言葉を聞いたことはありますか。
私は小学校教員として働いていたときに教員ではない知人からそう言われたことがあります。教員として誇りをもって働いていたので、とても悔しい思いをしました。
「教員はつぶしがきかない」というのは「教員しかやってこなかった人は、教員以外の仕事に就くことが難しい」という意味です。
教員という仕事で培ったスキルは、本当に他の仕事には役立たないのでしょうか。
この記事では
- 教員はつぶしがきかないという噂が本当なのか
- なぜそう言われてしまうのか
を他業種に転職をした元教員の立場から考えてみました。
教員はつぶしがきかない、なんて本当かな??
結論「教員はつぶしがきかない」は嘘(うそ)。
私は2020年3月に小学校の教員を退職しました。そして、退職後少し経ってから転職活動を始めました。
転職活動をしてみると、仕事の候補は意外と多くあることがわかりました。また、複数の会社から内定をもらうことができました。
内定をいただいた会社からは教員だったことも生かして仕事をしてもらいたいと言われました。
このことから、「教員はつぶしがきかない」という噂は嘘(うそ)だということが証明できるのではないでしょうか。
教員のスキルが生かせる仕事もあるんです!
本記事では実体験も踏まえつつ、「つぶしがきかない」といわれる教員の転職について考えてみました。
なぜ教員は「つぶしがきかない」と言われるのか
なぜ教員は「つぶしがきかない」と言われてしまうのでしょうか。
プライドが高く、他の人の意見を聞けないというイメージがある
教員は子どもに「教える」という立場にいるため、誰かから「教わる」ことが苦手でプライドが高いと思われているのかもしれません。また、プライドが高いがために他人の意見を素直に聞けないというイメージもあるようです。
しかし、それはただのイメージに過ぎません。
私が実際に教員として働いていたときに出会った先生方の中には
- 初任の意見も聞いて活動に取り入れてくれる学年主任
- 謙虚で優しいベテラン先生
- 現場の声を拾って柔軟に対応してくれる管理職
などさまざまな先生方がいました。
もちろん、少しプライドが高いのかな、と思える同僚の先生もいました。でも、そのような人は教員の世界だけでなく他の会社にも一定数いますよね。教員だからといって全ての人が教わることが苦手でプライドが高いわけではありません。
ただ、転職活動の際に企業の採用担当の人がすでにこのようなイメージをもってしまっているのならば、面接などの場面で不利になってしまうかもしれません。
転職時の面接では自分のもっている力を十分に伝えられるよう、しっかりと準備をしていく必要があります。
「学校」という特殊な労働環境
「学校」という特殊な場での職ということもあって、「教員は社会に出たことがない。」と言われることもあるようです。
学校には、一般的な会社とは異なる労働環境や学校独自のルールが存在します。
たとえば、
- 昇進・昇給などが少なく、職員同士のフラットな関係性
- 夜遅くまで働いても残業代が一律
- 働き始めてから常に「人に教える」という立場にたつ
- 「売上」を意識して働く必要がない
などです。
私が教員から他業種に転職して特に感じたことは、学校教員はタイムマネジメントができない人が多いということです。
タイムマネジメントができない、というよりもタイムマネジメントをする必要がない環境にいるという言い方が近いかなと思います。
教員は何時間働いても残業代が出ません。そのため、業務内容の効率化を図ったり、時間を大切に使ったりせずになんとなく仕事をしている人が多いです。自分の仕事の内容によって売上が伸びたり昇進したりするということもないので、いつまでも効率があがらないのです。
学校という特殊な場でしか仕事をしていないために、一般企業に転職した際に正しい時間の使い方や仕事の仕方がわからないということが起こってしまうかもしれません。
しかし、これは学校に限らず、医療事務の人が広告代理店の営業職になったり、カフェ店員がプログラマーになったりするなど、業種の異なる職に転職する際には同じようなことが言えるのではないでしょうか。
新たな職に就くためには、新たな考え方や技術を身に着ける必要があります。学校で働いていたからといって、新たな分野での活躍が難しいかといわれると、全然そんなことはありません。
新たな分野で活躍するかしないかは、その人が元からもっている素質や能力、そして本人の努力次第です。
「教員だった」ことが生かされる仕事とは
今度は逆に「教員の経験が無駄ではない」と、そう思える場面を考えてみました。
1.観察力、傾聴力、それを伝えるコミュニケーション能力が生かされる仕事
教員は毎日子どもの様子を観察しています。そしてその様子を保護者に伝えたり、他の先生方と共有したりしています。そのため、子どもの様子をみて変化をとらえることや第三者に的確に伝えることが得意です。
また子どもたち同士のトラブルを解決するために、子どもたちの話を聞くことも多いです。ていねいに話を聞き、状況を的確にとらえ、解決に向けて考える力も培われます。
営業職やカウンセラーの仕事など、教員として培った傾聴力やコミュニケーション能力を生かすことができる仕事はたくさんあります。
2.マルチタスクの能力が生かされる仕事
「マルチタスク」とは、いくつかの仕事を同時に進めることをいいます。対義語は「シングルタスク」です。どちらがより優れている、というわけではなく、どちらの働き方にもメリットとデメリットが存在します。
教員は仕事の性質上、いくつかのことを同時に進めなければならないことが多くあるために「マルチタスク」の能力が身につくことが多いです。
例えば運動会の時期には、日々の授業の準備に加え、学年競技の企画や音楽隊の演奏の指導、職員に割り当てられた係の仕事など考えなければいけないことがたくさんあります。
それらの仕事を同時進行していくことで、マルチタスクの能力を身に付けることができます。
マルチタスクはシングルタスクに比べると一つ一つの仕事が雑になってしまったり、漏れがでてきてしまったりする心配もありますが、私は「To doリスト」を作ったり、見通しをもって予定を組んだりすることで、一つ一つの仕事に漏れがないように取り組む力がつけることができました。
複数の仕事に同時にとりかかることができる「マルチタスクの能力」は、一般企業の仕事にも生かすことができるでしょう。
3.少し先の未来を想像する力が生かされる仕事
教員という仕事は未来を担う子どもたちに対して「この子たちが大人になったらどうなるのか」「どんな大人になってほしいのか」ということを常に考えながら働く仕事です。
「この授業によってこの力をつけると、将来こんなことに役に立つ」「これができたから次はこれができるようになる」という風に、常に少し先の未来を想像しながら子どもたちとかかわるように意識しています。
その力は、プロジェクトの完成図を想像しそのために今すべきことを考えたり、今後の世の中を見通して事業計画を立てたりと、学校以外の場所でも役に立つ場面があります。
4.教員免許が必要な仕事
教員免許を取得するためには大学に通ったり、試験を受けたりしなければなりません。そうして取得した教員免許状は、正規の教員の仕事以外にも生かすことができます。
例えば、こんな仕事はいかがでしょうか。
学校関連の仕事
教員採用試験を受けなくとも、学校で働くことができます。産休や育休の職員の代わりに入る臨時採用職員や、週に何日・何時間と決めて契約内で働く非常勤講師などです。
正規採用と異なる点はいくつかありますが、メリットとしては、学校をある程度自分で選ぶことができる(正規採用だと転勤先が選べないため)点や、子育てをしながらでも時間が短く少ない負担で働くことができる点などが挙げられます。
デメリットとしては、非常勤講師の場合は学級担任をもつことは時間的に難しく、専科担当や級外担当職員になってしまうことが多いということ、臨時採用職員として学級担任をもつことになると、ほかの正規職員と同じくらいの負担がかかってしまうということなどが挙げられます。
また決められた契約期間があるので、同じ学校で安定して働き続けるということは難しいです。
近年は教員の退職者が後を絶たず、どの学校でも職員が足りていないという話をよく耳にします。教員免許をもっているのであれば、各自治体の採用試験に合格しなくても非常勤講師や臨時採用職員という立場で学校現場で働くことができます。
児童指導員
児童指導員とは、児童発達支援や放課後等デイサービスなどの福祉施設において配置が求められる厚生労働省が定めた職業です。教員免許があれば、児童指導員として働くことができます。
仕事の内容は、障害のある子どもたちへの療育や家族による養育が困難になった子どもたちへのケースワークなどです。
私自身も教員免許を生かせる仕事を探していたときに、放課後等デイサービスでの児童指導員という仕事に出会いました。
障害のある子どもたちと放課後を共に過ごし、一緒にトレーニングをしたり勉強をしたりすることで、子どもたちの笑顔と成長がみられるとてもやりがいのある仕事です。
子どもたちをモニタリングして保護者の方とともに今後の方針を話し合い、支援計画を作成する児童発達支援管理者(児発管)という仕事もあります。その資格をとる際にも、教員として働いていた経験が役に立ちます。(児発管になるためには、一定の経験年数や講習を受ける必要があります。)
学習塾での仕事
教員として子どもたちに様々なことを教えていたノウハウを生かすことができる仕事として、学習塾での講師や子どもたちの学習プランを考えるという仕事があります。
学習塾は放課後の教科指導がメインとなりますので、生活指導や徳育、体育、食育等の指導も伴う学校とは若干異なる環境ではありますが、授業を通して子どもたちとかかわり、学力をつけていくという部分では共通しています。
教員免許が必須な仕事というわけではないですが、教員としての経験やそのときに身についたことをうまく伝えることができれば、採用面接の際のアピールになるかもしれません。
結論「教員はつぶしがきかない」なんてことはない。
この記事では教員はつぶしがきかないのかどうか考えました。
結論としては、実際に私も教員以外の仕事に転職することができました。
私の場合は「児童発達支援」での児童指導員という、教員と同じように子どもたちを相手にする仕事に就きました。
「なんだ、結局子ども関係の仕事かあ…」と、そう思われる方もいらっしゃると思います。そうです。転職活動をしていて気がつきました。私にとっては「子どもと関わってその成長を支援すること」がやりがいであり、楽しくできる仕事だったんですね。
今は教員時代と比較して、のんびりかつ楽しく働くことができています。転職して本当によかったです。
転職して本当に良かったです。
教員時代の知り合いにはウェブ関係の仕事に就いた方や、心理士として一般企業に転職した方もいます。元教員でも、子ども関係・教育関係以外の仕事にも就くことが可能です。
教員時代に培った力は生かしながら、足りない力は新たに勉強をして身につけていけばよいのです。私自身も、新たに勉強をして保育士の資格をとりました。今の現場(児童発達支援)では保育士として働いています。
もう「教員はつぶしがきかない」なんて言わせないぞ!
最後までよんでいただきありがとうございました。
まつこ
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